角田晃広のマジ歌の間違った聞き方
テレビ東京のゴッドタンの「芸人マジ歌選手権」。名前の通り、芸人が真剣にオリジナル曲を歌う、という体の内容の企画。
その企画の常連に、東京03*1の角田晃広がいる。この人の歌がとても良い(作ったのは東京03の当時のマネージャー大竹)。
特に歌詞がとても素敵だ。Aメロ、Bメロでメッセージ性のありそうな問題提起をして、サビで手のひらを返す。振りがあってボケる、健全かつオーソドックスなコントのノリ。
例えば「USA」の歌詞。
この先どこに向かうのか
我が祖国 日本
”FXXK”と書かれた服をまとい
ファーストフードに群がる若者
ハンバーガーがお袋の味ですか?
大和魂はどこへ
日本がアメリカに染まってく
横文字に侵されてる
アメリカに侵されてる
角田晃広 USA Aメロ Bメロ部分歌詞
曲のタイトル通りアメリカに日本が乗っ取られる事を憂いた歌に見える。
メロディーも盛り上がりを見せ、ここからサビという所で
こんな俺達を止めないで
英語の方が
カッコイイ
英語はカッコイイ
英語でしゃべりたい
アメリカ大好き
もっともっと
アメリカになれ
JAPAN
角田晃広 USA サビ部分歌詞
ダセェ!軟弱!と思わず言ってしまいたくなる歌詞。
なんだけど、サビのメロディーのドライブ感、声の迫力、演奏の上手さ(特にマネージャーの大竹がメンバーとして加入した後)でその格好悪い歌詞を肯定する力が付加されてしまう。妙な肩透かしと、その隙を突くような不思議なカタルシスを感じる曲がとにかく多い。
自分としてはここ辺りまでが良いと思えるライン。これ以降なんだかこれ見よがしにお笑い寄りになっていって、少し抵抗がある。自分としてはまとめ2にある「ロックよろしく」が一押し。
wikiで角田晃弘を調べると
長渕剛の大ファンで、「社会に物申すみたいな歌手」に憧れて作詞を試みたが、「社会に何の不満もない」ということに気が付き、断念した。
この人のこういう所、単純に面白いんだけど、それだけではなくて、正論とか良いことを何か言わなければいけない強迫観念のあるこんな世の中にあって、この「何も言いたいことがない」「軟弱だけど面倒だから別に今のままでいい」と開き直ってそれを曲にしてしまう感覚が気持ちいい。
これはロッキンオンでいうところの「時代の痛みを突破する貫通力」と言っても差支えはない。マネージャー大竹という音楽性が角田晃広と言うルーツに出会ったことで生じる化学反応。この瞬きすら許されない閃光はまぎれもなくロックという名の十字架を背負った原初体験。
ハイ、という訳で、正しい聞き方は何も考えずに笑いながら見ることですよ。