フープメン(2巻完結) 川口幸範
週刊少年ジャンプで連載されていた、全2巻のいわゆる打切りマンガ。ひょんなきっかけからバスケットボールを始めることになった佐藤雄歩がバスケットボールを通して成長する青春ストーリー。
このマンガ色々欠点があるマンガだけど、自分としてはお気に入りの漫画。
不幸なことにジャンプの大ヒット作「黒子のバスケ」と掲載時期が重なっていて、最終的に打切りという形で連載が終了してしまった。最終巻の帯に「等身大バスケストーリー」と書いてあるけど、派手な必殺技が出てくる黒子のバスケに対する当てつけなんだろうか。
特徴として、主人公にバスケットプレイヤーとしてのマンガ的に派手な才能がない(手首が柔らかいのでシューターには向いているらしい)。主人公の思っていること吹き出し(正式名称がよく分からない)とモノローグと妄想と回想の量がとてつもなく多い。かわりに他のキャラクターに割けるページが少なかったりするんだけど、その分この地味な主人公に感情移入がしっかりできる。
あと、最終回間際まで努力描写をしているというのも変わっている所。週刊少年ジャンプの三本柱*1に努力というのがある。この漫画の事を考えるにあたって、なんでその要素があると漫画が面白くなるのかという事を考えていた。多分それは、はったりのきいた蘊蓄なのではなかろうか。読者の心理として努力、修行パートは取り返しのつかない緊張感のあるシーンではないので、間延びした印象を受けてしまう。ただそこで無闇にテキスト量、絵的な情報量が増えることで「なんかスゲー」的な感じが生まれ、それが成長を感じさせて、結果より面白く読ませてくれる。最近だと「ハイキュー!」の主人公のボール拾いパート、あと数年前の「トリコ」の修行パートあたりがこんな印象を受けさせてくれた。
最終話で友人たちが留学や大学の推薦等でバスケットを続ける中、主人公の進退について描かれなかった。代わりに、前述の努力描写の最終的に落ち着貸せる先として「チームの勝利」ではなく「主人公の成長」というスケールの小さいカタルシスに収束させてた。最終話の後に主人公がバスケットを続けるのか続けないのかはわからない。だけど「努力」「友情(特に書かなかったけどこの辺もしっかり描かれていた)」「勝利」を経て「成長」を獲得した彼はきっと幸せな人生を歩んでいくのだろう、と予感させてくれる。ジャンプ的な派手さがなかったので打ち切られこそしたものの、まぎれもなく名作だったと言ってよいと思う。
ついでにこの漫画、見開きページと1ページまるまる使った絵の迫力があって気持ちがいい。
- 作者: 川口幸範
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2009/07/03
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*1:努力、友情、勝利