そのおこだわり俺にもくれよ

日常のどうでもいい事にこだわりを持つ人たちのレポートマンガ、「その「おこだわり」、俺にもくれよ!!」を読む。


正直この漫画、絵はそんなにうまくない。けど、題材選びが上手なのか引き付けられるし、何度も読み返したくなる魅力がある。漫画力があるという事なんだろう。


登場する人たちは食べることはもちろん、「帰る」「寝る」といった行為にもこだわりを持ち、なぜか誇らしげかつ上から目線で魅力を語る。


その人たちの語り口を見ているとこんな気持ちになる。
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 思ふに人間の感情といふものは、極めて単純であつて、同時に極めて複雑したものである。極めて普遍性のものであつて、同時に極めて個性的な特異なものである。
 どんな場合にも、人が自己の感情を完全に表現しようと思つたら、それは容易のわざではない。この場合には言葉は何の役にもたたない。そこには音楽と詩があるばかりである。


萩原朔太郎 詩集〈月に吠える〉全篇 従兄 萩原栄次氏に捧ぐ


「内ポケット」から「トマトをぐじゅぐじゅにして芋焼酎と飲む」という行為まで美醜わけ隔てなく描かれ、どれだけ、どのように好きなのかを語る様は、もはや詩的ですらあるように思う。


「丁寧な暮らし」の代表格、松浦弥太郎がクックパッドに入る時代。旧クウネルやBRUTUS*1みたいに格好良くなくても、個々人の強烈な「好き」の感情のあるアンバランスな生活でも良いじゃないかと思える漫画だった。



*1:俺自身、松浦弥太郎もクウネルもBRUTUSも嫌いではない。むしろ好き。