「バットマン キリングジョーク」性質の悪い嫌がらせ(ネタバレ含)

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バットマンシリーズの愛されキャラジョーカーが主役の「バットマン キリングジョーク」を読む。ウォッチメンのアランムーア作という事で、シンプルなコマ割りでページが進行していく。が物語の内容が相変わらずエグい。

内容。アーカムアサイラム*1を脱獄したジョーカーがバットマンの相棒のゴードン刑事を拉致する。廃墟となった遊園地でゴードンを精神的に追い詰めようとする。そこにバットマンが助けに来るがそれこそが彼の本当の狙いだった。

f:id:natutoyuuki:20160529010259j:plain:h250:rightこの物語の節々でジョーカーは「人生に意味はない」「人間に価値はない」と言い放つ。最終的にその言葉が肯定されるように物語はジョーカーはバットマンに笑いながら殺される。*2

狂気の淵に立たせたゴードンは正気を保っていた。バットマンの救いの手は「俺もお前も結局は狂ってる」とジョークで返し、手を払う。その助けようとしているはずのバットマンジョーカーがジョーカーになる直接の原因となっていた。ジョーカーの悲劇としか言えない過去も本人に忘れられてしまった。世界線は違うもののこの本に収録されている短編「罪なき市民」では守るべき人にバットマンは殺意を向けられる。

善意も悪意も空回りして全ての行為が「無意味」に帰結して、何もかもが台無しに終わる。それこそがジョーカーが求めていた事だったのかもしれないと思う。

表紙でジョーカーは本を手に取る読者に「SMILE!(笑え!)」とカメラを向ける。

無価値さや無意味さはコメディーの根本だと思うけど、このコミックにおいて最後に笑っていたのはジョーカーだった。この物語の終了後、ゴードンの娘は下半身不随になり、それを気に病みゴードンは自身を責め続けるだろう。バットマンは不殺の禁を破り闇の騎士として生きられない。読者は彼らを思いただただ引くしかない。ヒーローもヴィランも幸せになれない結末。それで「笑え!」というのは趣味が悪すぎて、逆に変な笑いが漏れてくる。読後の荒涼感にしばし呆然としてしまう。ジョーカーが表紙のアメコミはこんのばっかりなのか。

良識を突破した感情を湧きあがらせてくれるジョーカーの本としておすすめの一冊。

2016/08/27追記
ハーレイクインのコミックで荒んだ気持ちを0に戻すのが最大のリハビリになりますよ。

bustuyoku.hatenablog.com
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*1:良く異常犯罪者を出所させる精神病院。使用例「アーカムアサイラム仕事しろ」

*2:死んでない説もあるけど、首絞めてるバットマンの顔がどう考えても鬼